AWSがタイをアジアのAI拠点に 5000億円超投資の全貌

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米アマゾン傘下のクラウド大手Amazon Web Services(AWS)が、タイを東南アジアにおけるAI(人工知能)の一大拠点に育てる構想を本格化させている。同社は2022年に「2037年までにタイへ50億ドル(約7500億円)以上を投資する」と表明しており、その公約の第一歩として2025年1月に「AWSアジア・パシフィック(タイ)リージョン」を開設。すでに120を超えるクラウドサービスを現地で展開し、数千人規模の雇用を生み出している。

AWSタイのカントリーマネージャーを務めるヴァットスン・ティラパタラポンさんはバンコク・ポスト紙の取材に対し、「世界共通のグローバル基準で同一品質のクラウドサービスを提供できることが当社の最大の強みだ。今後はタイをAIハブとする取り組みにも注力していく」と語った。

■タイのデジタル経済は5.6兆バーツ規模へ

タイ政府の国家デジタル経済社会委員会(ONDE)は、同国のデジタル経済が2025年に前年比4.2%成長し、約5.6兆バーツ(約24兆円)に達すると予測している。ONDEはデジタル政策の司令塔となる政府機関で、タイのデジタル化推進を統括している。こうした成長の基盤としてクラウドインフラの重要性が増しており、AWS以外にもマイクロソフトやグーグルなど複数の大手クラウド事業者がタイ市場に参入している。ヴァットスンさんは「多様なプロバイダーの存在がクラウド技術への認知度を高め、タイ企業のデジタル化を後押しする」と歓迎する一方、「サービス品質にはプロバイダーごとに差があるため、企業はコスト面だけでなく、グローバル基準の一貫性やサービスの多様性を慎重に見極めるべきだ」と助言した。

■AI導入企業が急増 2025年には60万社超へ

タイではAIを業務に導入する民間企業が急速に増えている。2024年時点で約15万社がAIを活用しており、普及率は前年の24%から32%へ上昇した。AWSと英調査会社ストランド・パートナーズの共同調査によれば、2025年までにAIを業務に統合するタイ企業は60万社を超える見通しで、AIは「競争上の優位性」から「事業運営上の必需品」へと位置づけが変わりつつある。ヴァットスンさんは政府に対し、クラウドファースト政策の継続とAIガバナンスの整備を求め、AI技術の悪用防止に向けたルール作りの重要性も訴えた。

■次世代AI「フロンティアエージェント」が焦点に

2026年に向けたAWSタイの重点戦略は、タイリージョンの顧客導入加速、AIプラットフォームの活用促進、パートナー企業との連携拡大の3本柱だ。中でも注目されるのが「フロンティアAIエージェント」と呼ばれる次世代の自律型AIシステムだ。従来のチャットボットのような対話型AIとは異なり、複雑な多段階の業務課題を人間の指示なしに自律的に解決できるのが特徴で、ソフトウェア開発やセキュリティテスト、運用上のトラブル対応などを自動化する。

ヴァットスンさんは「タスクの実行や業務の自動化が可能なAIエージェントの台頭は確実だ。将来的には、あらゆる企業のあらゆる部門に数十億規模のエージェントが存在するようになる」と展望を示した。このフロンティアエージェントは、人間のように過去のやり取りを記憶する「エピソード記憶」機能と、行動を制御する厳格なポリシー管理を備えており、企業が安心して導入できる設計になっているという。

AWSはこうした次世代AI需要に対応するため、テキスト生成から企業独自のモデル構築まで幅広い用途に対応する「Amazon Nova」モデルファミリーの展開を進めている。また、高額な商用ソフトからオープンソースへの移行を支援するなど、レガシーシステムの刷新によるコスト削減にも力を入れる方針だ。タイに進出する日系企業にとっても、現地でグローバル水準のクラウド・AI基盤が利用できる環境が整いつつあることは、事業のデジタル化を加速させる追い風となりそうだ。

出典: Bangkok Post

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