タイ商工会議所大学(UTCC)の経済・ビジネス予測センターは、中東紛争が長期化した場合、タイのGDPが最大2.31ポイント縮小する可能性があるとの分析結果を発表した。エネルギー価格の高騰や輸出の落ち込み、観光収入の減少を通じてタイ経済に深刻な打撃を与えるおそれがあり、タイ在住の日本人や日系企業にも影響が及びかねない。
■3つのシナリオで試算 最悪ケースは経済損失4270億バーツ超
同センターは、紛争の規模と期間に応じて3段階のシナリオを提示した。最も楽観的なケースは1カ月以内に紛争が収束する場合で、エネルギーコストが233億バーツ(約1000億円)上昇し、輸出は最大325億バーツ減少、観光収入も約90億バーツ落ち込むと試算。GDPへの影響は0.35ポイントの低下にとどまるとした。
紛争が約3カ月に及び、世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡が封鎖された場合、被害は大幅に拡大する。エネルギーコストは800億バーツ上昇し、輸出は975億バーツ減少、観光収入も208億バーツ落ち込む見通しだ。経済損失は合計1980億バーツに達し、GDPは1.07ポイント低下する。さらに、タイ政府が物品税を1リットルあたり3バーツ引き下げた場合、石油燃料基金の損失により725億バーツの財政負担が生じる。ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋を結ぶ唯一の海上通路で、世界の原油輸送量の約2割が通過する戦略的要衝だ。
最悪のシナリオは、紛争が長期化し終結のめどが立たないケースだ。エネルギーコストは2030億バーツ上昇し、輸出は1950億バーツ減少、観光収入は約293億バーツ落ち込む。経済損失は4270億バーツを超え、GDPは2.31ポイントもの低下が見込まれる。
■物流コスト上昇が家計を直撃 タイ政府に対策を提言
UTCCのタナワット・ポンウィチャイ学長は、物流コストの上昇が消費者物価に転嫁され、タイの景気回復が鈍化するリスクがあると警鐘を鳴らした。タナワット学長はまた、包装製造に欠かせないプラスチックペレットの不足への対応や、農業国タイにとって重要な肥料価格の安定化も政府に求めた。
同センターは影響を緩和する具体策として、エネルギー価格への補助金支給を提言する一方、補助金の費用が最終的に国民負担となることを政府が透明性をもって説明すべきだと強調した。加えて、省エネ対策の推進や国内エネルギー供給の確保、企業が適正価格でエネルギーを調達できる環境整備による物流コストの抑制も求めた。
■代替市場の開拓と中小企業支援も不可欠
さらにUTCCは、インフラ投資による成長促進を提言し、商務省と外務省に対して代替輸出市場の開拓を急ぐよう促した。観光分野では、中東紛争による訪問者数の減少を補うため、東南アジア市場をターゲットにした誘客強化を提案している。タナワット学長は、専門金融機関を通じた中小企業向けの低金利融資の拡充や、国民のパニックや買い占めを防ぐための正確で迅速な情報発信も併せて求めた。
タイは中東から原油や天然ガスの多くを輸入しており、エネルギー価格の変動がガソリン代や食品価格に直結しやすい経済構造を持つ。在タイ日系企業にとっても、原材料費や物流コストの上昇は経営を圧迫する要因となるため、今後の情勢を注視する必要がある。
出典: Bangkok Post



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