中東の地政学的緊張の高まりを受けたエネルギー価格の上昇が、タイの製造業に影を落とし始めている。タイ証券取引所(SET)上場の大手消費財メーカー、オソツパ社(OSP)は、物流や包装製造部門でコスト増の影響を受ける可能性があると明らかにした。オソツパ社は日用品や飲料などを幅広く手がけるタイの老舗コングロマリットで、日本でも一部製品が輸入販売されている。
同社グループCFOのラティポン・ラチャロエンさんによると、現時点では今後6カ月分の原材料調達契約を確保済みだという。しかし中東情勢が長期化した場合、早ければ今年6月ごろから影響が顕在化する恐れがある。最悪のシナリオとして原油価格が1バレル140〜150ドルまで上昇すれば、今年の利益率は1〜2%押し下げられる見通しだ。ラティポンさんはエネルギーコストが同社の総コストの約20%を占めると説明した。
また、タイ国営エネルギー大手PTT社から液化天然ガス(LNG)価格の上限を90日間に限り設定するとの通知を受けたことも明かした。LNGは同社のボトル製造工程に欠かせない燃料であり、価格上昇は直接的なコスト増につながる。さらに中東情勢の悪化は海上輸送ルートにも影響を及ぼしかねず、物流の遅延リスクも懸念される。こうした不透明な状況から、今年下半期の業績見通しは依然として読みにくいという。
一方、オソツパ社のムックダ・パイラチャヴェットCEOは、海外戦略の強化方針を示した。購買力の高い中東市場、とりわけアラブ首長国連邦(UAE)やオマーンへの注力に加え、有力パートナーとの協業によるエコシステム構築を推進する。注目されるのは、成長余地の大きい中国市場でベビーケアブランド「バビ・マイルド」のテスト販売を開始する計画だ。現在、同社は世界40カ国で事業を展開している。
タイ国内では少子化の進行が課題となっており、オソツパ社は「ウルトラマイルド」ブランドで母子向け製品カテゴリーの拡充を図るとともに、新たなシャンプー製品の投入で成人向け市場への本格参入を目指す。タイの合計特殊出生率は近年1.0を下回る水準まで低下しており、ベビー用品市場の縮小は業界全体の共通課題となっている。
同社の国内飲料部門を統括するヌンタナ・カオプルムさんは、厳しい経営環境の中でも事業全体は安定していると強調。多様な消費者ニーズに対応できる複数ブランドのポートフォリオが同社の強みだと自信を示した。タイ経済はエネルギーコストの上昇と地政学リスクという二重の逆風にさらされており、製造業各社の対応が今後の焦点となりそうだ。
出典: Bangkok Post



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