タイ南部の離島で、国産ドローンを使って医薬品やワクチンを届ける試験運用が始まり、注目を集めている。従来は船便に頼るしかなかった離島への医療物資輸送を、わずか15分に短縮する画期的な取り組みだ。
タイ医療サービス局(DMS)のナッタポン・ウォンウィワット局長は5月23日、医療用ドローンの試験運用を2023年から南部サトゥーン県で開始したと発表した。サトゥーン県はマレーシア国境に近いアンダマン海沿いの県で、大小の島々が点在し、医療アクセスの確保が長年の課題となっている地域だ。
■配送時間を120分から15分に短縮
ナッタポン局長によると、本土の病院から島の保健施設への医薬品輸送にかかる時間は、従来の約120分からわずか15分にまで短縮された。医薬品やワクチンの品質管理基準も満たしているという。
これまで離島への医療物資は船便に頼っており、海が荒れる雨季にはスケジュール通りに届かないことも珍しくなかった。ドローン配送の導入により、慢性疾患を抱える患者や高齢者、小児、緊急の薬が必要な患者に対して、天候に左右されず確実に医薬品を届けることが可能になる。
■3県に拡大し実証試験を本格化
現在、試験運用はサトゥーン県に加え、人気リゾート地として日本人にもなじみ深いクラビ県やパンガー県にもルートを拡大している。各ルートでは少なくとも30便の試験飛行を実施し、サービスの信頼性を検証中だ。飛行はタイ民間航空局の規制に準拠した計画のもと、経験豊富なタイ人パイロットが操縦し、リアルタイムの位置追跡と厳格な温度管理によって医薬品の品質を確保している。
ナッタポン局長は「タイでは医療物資のドローン輸送はまだ非常に新しい分野」と指摘。規制面や国際基準との整合性を慎重に確認しながら進めていると説明した。また、将来的に輸送コストをタイの公的医療基金で賄えるよう、実際の運用データを蓄積する狙いもあるという。タイには国民皆保険に近い「30バーツ医療制度」があり、こうした公的基金との連携が実用化の鍵を握る。
■全国展開を視野に離島医療の格差解消へ
このプロジェクトは、タイ政府系機関であるタイ生命科学卓越センター(TCELS)が資金面で支援し、地方の保健機関や航空当局、民間企業が連携して推進している。DMSは今後、医療物資の積載量を増やし、より遠方の離島へ飛行ルートを拡大する計画だ。
ナッタポン局長は「この取り組みを全国モデルとして他の県にも展開し、離島に暮らす住民が都市部と同じレベルの医療を受けられる環境を目指す」と述べ、地理的な条件が治療の障壁とならない社会の実現に意欲を示した。タイには約400の有人島があるとされ、実用化されれば恩恵を受ける住民は広範囲に及ぶとみられる。
出典: Bangkok Post



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