中東情勢の緊迫化を受け、タイ政府がエネルギー安全保障の強化に動いている。エネルギー省は3月6日、国内の石油備蓄量がこれまでの60日分から95日分に増加したと発表した。国内の石油取引業者が追加調達を進めた結果で、すでに納入が確定した分に加え、さらなる調達も計画されているという。
■石油備蓄の引き上げと供給安定策
エネルギー省のウィラパット・キアットフンフー副事務次官は、首相の指示により、取引業者に対して法定備蓄比率を現行の1%から3%へ段階的に引き上げるよう求めていると説明した。同省はエネルギー事業局や地方事務所に対し、買い占め防止のための監視強化と、供給が不足している地域への配送迅速化を指示。また、経済関係を考慮してラオスとミャンマー向けを除く石油輸出を削減する措置も取っている。タイは原油の大部分を中東からの輸入に頼っており、地政学リスクへの備えが急務となっている。
■中東では複数国が空域閉鎖 タイ人被害なし
イスラエル・米国・イラン間の緊張が高まる中、衝突は周辺国にも波及している。アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエル、シリア、イラン、バーレーン、クウェート、カタールではすでに空域が閉鎖された。一方、サウジアラビア、オマーン、ヨルダンの空域は現時点で開放されている。
タイ外務省のパニドン・パチムサワット情報局次長代理は、現時点でタイ人の被害報告はないと述べた。同省は中東地域に滞在するタイ人に対し、危険地域からの速やかな退去と、最寄りの在外タイ大使館・領事館への連絡先登録を強く呼びかけている。タイからは中東諸国に多くの労働者が出稼ぎに渡っており、有事の際の安否確認体制が課題となっている。
■長期化に備え代替エネルギーの導入も検討
事態が5月まで長引いた場合に備え、エネルギー省はディーゼル燃料やバイオディーゼル、パーム油由来のB100燃料など代替エネルギー源の導入を検討している。コスト削減策として、排出基準がやや緩いユーロ4規格燃料の輸入も視野に入れている。
電力の安定供給に向けては、液化天然ガス(LNG)の追加調達やタイ湾での天然ガス増産に取り組むほか、バイオマス発電や水力発電による電源の多様化を推進し、住宅地や工業団地での停電回避を図る方針だ。日本企業の工場も多く立地するタイ東部の工業団地への影響が懸念されており、今後のエネルギー政策の動向が注目される。
出典: Bangkok Post



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