中東情勢悪化でタイ物流が危機的状況に 保険料5倍で輸出企業に打撃

経済投資

中東での軍事衝突がタイの貿易・物流に深刻な影響を及ぼし始めている。タイ在住の日本人ビジネス関係者にとっても無関係ではない事態だ。

■ホルムズ海峡封鎖の危機でサプライチェーンに混乱

タイ工業連盟(FTI)のクリエンクライ・ティエンヌクン会長は、世界の石油・ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行が制限されることで、グローバルサプライチェーンが不安定化するリスクを指摘した。イランは水曜日、同海峡の「完全な支配権」を掌握したと宣言し、通過する船舶を標的にする可能性を示唆している。中国とロシアの船舶は対象外とされるが、タイを含むその他の国の船舶は海峡を避けるよう推奨されている状況だ。

こうした緊張の高まりを受け、戦争リスク保険料は400〜500%もの急騰が見込まれており、国際貿易コスト全体を大きく押し上げる見通しだ。

■タイ輸出企業に貨物返送か迂回を勧告

タイ商工会議所のブミンダー・ハリンスイトさんは、中東向けに貨物を輸出しているタイ企業に対し、貨物をタイに返送するか、安全な代替港への迂回を海運会社に要請するよう呼びかけた。同氏によると、タイへの返送コストの方が、代替港での保管料などよりも安く済むケースが多いという。ただし、いずれの場合も追加費用は輸出業者の負担となる。

タイ全国荷主協議会(TNSC)は、全海運会社が中東向けの貨物予約を当面停止したと発表した。すでに航行中でペルシャ湾に未到達の船舶については、出発港への返送か安全な代替港への転送かを顧客に選択させる方針だ。返送の場合、コンテナ1個あたり約1,000米ドル(約15万円)の費用が発生する。

さらに、戦争リスクに伴う追加保険料として、20フィートコンテナ(TEU)1本あたり1,500〜2,000ドル、40フィートコンテナで3,000ドル、冷凍コンテナでは3,500〜4,000ドルが上乗せされる。TNSCはこれらの追加料金が即時適用され、情勢次第でさらに値上がりする可能性があると警告した。

■タイ経済への波及は避けられず 観光にも影響

中国発の世界各港向け海上運賃はすでに前週比6.5%上昇しており、物流コストの上昇は加速している。タイの経済政策に大きな影響力を持つ官民合同常設委員会(JSCCIB)は、中東情勢と米国の通商政策による不確実性を踏まえ、2026年のタイGDP成長率を1.6〜2.0%、輸出は前年比で最大1.5%の縮小と予測した。JSCCIBはタイ商工会議所、タイ工業連盟、タイ銀行協会の3団体で構成される経済団体で、その見通しはタイの景気動向を読む上で重要な指標とされている。

石油・天然ガス価格は1〜3カ月間高止まりし、貨物輸送だけでなく航空運賃にも影響が及ぶ見込みだ。クリエンクライ会長は「紛争が長期化すれば、エネルギー価格の上昇が企業と家計の双方にコスト増をもたらし、タイ経済全体に悪影響を及ぼす」と危機感を示した。

観光分野でも影響は避けられない。JSCCIBによれば、中東からの訪タイ観光客数は今年7万〜8万人減少する見通しだ。タイ観光スポーツ省のデータでは、2025年に中東地域からタイを訪れた観光客は約75万人に上っており、減少幅は決して小さくない。タイに生産拠点や取引先を持つ日本企業も、物流コストの上昇や納期遅延への備えが急務となっている。

出典: Bangkok Post

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