タイ北部チェンマイ県のバーンフアイナムウン村近くの森林で、牛の死骸が発見され、村人たちの間に再び恐怖が広がっている。村長や国立公園の職員が現場を調査したところ、牛の首には鋭い牙で噛まれたとみられる痕跡があり、前脚が引きちぎられた状態で、胴体の肉も大きくかじり取られていた。傷の状態や食べ方の特徴から、野生のトラに襲われた可能性が高いと当局は推定している。
チェンマイ県はタイ北部の山岳地帯に位置し、広大な国立公園や野生動物保護区が点在する自然豊かな地域だ。近年、森林保護政策の強化により野生動物の生息域が回復しつつある一方で、人里に近い地域で大型の肉食動物が目撃されるケースが増えている。バーンフアイナムウン村は山間部の集落で、住民の多くは農業や畜産で生計を立てており、家畜が野生動物に襲われる被害は死活問題となる。
タイにはインドシナトラと呼ばれる亜種が生息しており、国際自然保護連合のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されている。タイ政府は国立公園内でのカメラトラップ設置や密猟取り締まりなど保護活動を進めており、西部のフアイカーケン野生動物保護区などでは個体数の緩やかな回復が報告されてきた。しかし、生息域の拡大に伴い、周辺の農村部では家畜が襲われる事案も散発的に発生しており、野生動物の保護と住民の安全をどう両立させるかが課題となっている。
地元当局は今回の現場周辺にカメラトラップを追加設置し、トラの個体を特定する調査を進める方針だ。また、住民に対しては夜間の単独での外出や森林への立ち入りを控えるよう注意を呼びかけている。チェンマイは日本人観光客や長期滞在者にも人気の高い都市だが、郊外や山間部では野生動物との遭遇リスクがあることを改めて認識しておきたい。
出典: Bangkok Post



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