タイ政府が「タイ製」と偽って表示された製品の輸出に対する取り締まりを大幅に強化している。背景には、米国市場へのタイからの輸出が急増し、米国当局の監視の目が厳しくなっていることがある。
■対米輸出急増で米国がタイを注視
タイ商務省の対外貿易局(DFT)のアラダ・フアントン局長は、税関当局と連携し、海外へ輸出される商品の原産地表示に関する検査を強化する方針を明らかにした。特に問題視されているのは、中国など第三国から輸入された製品に「Made in Thailand」と偽のラベルを貼り、米国へ再輸出するケースだ。
アラダ局長は「米国はタイを注視している。対米輸出が大幅に増えたためだ」と語った。タイの対米輸出国ランキングは前年の11位から7位に上昇しており、米国側の警戒が一段と高まっている。同局長は「信頼性を維持し、事後調査や追加関税の賦課を防ぐためにも検査の強化が不可欠だ」と強調した。
なお、タイは米国のアンチダンピング(不当廉売)措置の対象件数で世界5位に入っている。首位は中国の707件で、韓国137件、インド108件、台湾103件に続き、タイは73件となっている。アンチダンピング措置とは、不当に安い価格で輸出された製品に対し、輸入国が追加関税を課す貿易救済措置のことだ。
■押収額は前年比6割増 原産地偽装は142%増
タイ税関総局のパントン・ロイクルナンタ局長は、反ダンピング関税の回避が疑われる商品や、関税優遇を受けるために原産地を偽装した製品の摘発に向け、対外貿易局との連携を強化していると述べた。
2025年10月から2026年2月にかけて、税関当局はアンチダンピング関税の回避を試みた1億1000万バーツ(約4億6000万円)相当の貨物と、原産地偽装の3億9300万バーツ(約16億5000万円)相当の貨物を押収した。押収総額は5億300万バーツ(約21億円)を超え、前年同期比で61%増加した。特に原産地偽装に関しては前年比142%増と大幅に拡大している。
具体的な事例として、バンコク港の税関事務所では、中国から輸入されたにもかかわらず「タイ製」と表示された枕カバーや浮き輪などの雑貨約5万点が押収された。推定経済的損害は1120万バーツ(約4700万円)に上る。このほか、爪切りや鏡ケースなど約8万5000点も押収され、被害額は494万バーツ(約2100万円)と見積もられている。
■罰則強化へ 貨物没収も視野に
原産地の偽装は、1938年制定の「原産地虚偽表示輸入禁止法」、1991年制定の「商標法」、2017年制定の「関税法」に違反する行為だ。パントン局長によると、現行の罰則は少額の罰金にとどまっているが、今後は原産地を偽装した貨物そのものを没収できる権限を当局に付与する新たな罰則枠組みの導入を準備中だという。
パントン局長は「こうした取り組みはタイ企業を保護し、公正な競争を促進するとともに、国際社会からの信頼を維持しながらタイ経済の持続的な発展を支えるものだ」と述べた。
米中貿易摩擦の激化やトランプ政権による高関税政策を受け、中国製品が関税の低い第三国を経由して米国に流入する「迂回輸出」が世界的に問題となっている。タイをはじめとする東南アジア諸国は、こうした迂回ルートに利用されるリスクが高まっており、各国が対策を急いでいる。在タイ日系企業にとっても、サプライチェーンにおける原産地管理の厳格化が今後さらに求められることになりそうだ。
出典: Bangkok Post



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