【バンコク発】タイの2月8日総選挙から数週間。政権奪取を目指すプムジャイタイ党が、連立パートナー選別で大きな戦略転換を行った。クラタム党を連立交渉から外し、プータイ党を主要パートナーとする構図が浮かび上がっている。
■連立構図、クラタム党除外で権力集約
プムジャイタイ党とプータイ党の2大勢力で約300議席を確保し、小政党の支持を得れば過半数達成が見通されている。プムジャイタイ党193議席、プータイ党74議席に対し、58議席を有するクラタム党を除外した理由について、政治観測筋は「内閣ポストの配分交渉を簡素化させるため」と指摘する。
クラタム党はタマナット・プロムポン最高顧問の指導下で、人民党や民主党などと野党ブロックへの参加を模索。連立から外されたことで、プータイ党が唯一の主要パートナーとしての交渉力を大幅に強化された形となった。
■プムジャイタイ党の脆弱性懸念
この決定に対し、支持層から不安の声も上がっている。もしプータイ党が離脱すれば、政府の議会多数派が瓦解する危険性があるためだ。
チュラロンコーン大学のスティートーン・タナニティチョット政治学者は、こうした懸念は過度だと指摘。「クラタム党が政治的脅迫に動いても、党自身に反発が返ってくる可能性が高い」と述べた。同学者は、プムジャイタイ党がクラタム党を除外した背景に、タマナット氏とプータイ党・タクシン・シナワット元首相との政治的結びつきへの懸念があった可能性を示唆している。
■権力ネットワーク、連続性を支持
スティートーン学者によれば、既存の権力ネットワークや主要企業グループがプムジャイタイ主導政権の継続性を支持しているため、選挙無効化の動きは難しいと見立てる。2月8日の選挙で使用されたバーコード・QRコードをめぐる秘密投票違反の請願問題も、同学者は「選挙無効化には至らない」と評価している。
一方、一部観測筋はクラタム党が連立参加を求めてプムジャイタイ党に圧力をかけるシナリオも想定。人民党、プータイ党、クラタム党による代替連立の可能性も取り沙汰されている。
■敗北の要因、「エコーチェンバー効果」と軍事問題での失策
2023年の総選挙で151議席を獲得した人民党が、今回118議席と33議席を失った背景が明らかになりつつある。敗因の一つが「エコーチェンバー効果」。ソーシャルメディア上での圧倒的な支持は、実際の有権者層全体での広がりを過大評価させたという指摘だ。
特に農村部や半都市部では、タイ・カンボジア国境紛争における軍の防衛姿勢を支持する国民感情が強い。人民党の重鎮による軍の役割への批判的発言は、ナショナリズム感情を刺激し、多くの浮動票を失わせた。軍関係者や退役軍人が多い選挙区での得票減が顕著だったという。
■信頼回復が急務
ナッタポン・ルンパニャウット人民党党首は選挙後、党内規律の強化、候補者選考の改善、コミュニケーション戦略の洗練を公約した。しかし、敗北からの失地回復は容易ではない。政治筋によれば「オンライン活動と地域での草の根活動のバランス再構築」が課題となる。
タイ総選挙の結果は、有権者の優先事項が国家的出来事に応じて急速に変化すること、そして主流意見と乖離すると見なされた政党は代償を払う可能性があることを示唆している。
出典: Bangkok Post



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