タイでIT機器が買えない 価格高騰と納期遅延が深刻化

経済投資

タイで企業や政府機関のIT調達が深刻な打撃を受けている。サーバーをはじめとするハードウェア価格の急激な変動により、IT投資計画の見直しを迫られるケースが相次いでいるのだ。

■見積もり有効期間がわずか7日に短縮

匿名を条件に取材に応じたベテランIT幹部によると、かつてハードウェアの見積もりは30日間有効だったが、現在は14日間に短縮された。さらに2025年2月以降は部品コストの急騰と在庫減少を受け、有効期間がわずか7日にまで縮まっているという。

背景にあるのはサプライチェーンの混乱だ。生産・納品のリードタイムは従来の1〜2週間から3〜4カ月へと大幅に延び、ベンダーは見積もりを出す前にサプライチェーン全体の在庫状況を細かく確認する必要に迫られている。

こうした状況を受け、IT調達の現場では対応策が多様化している。当初予算の範囲に収めるためにシステム要件を縮小する企業や、サーバーを一括導入せず段階的に拡張する企業も出てきた。年度半ばや前年度に組んだ予算では、現在の価格上昇分をカバーできないケースが増えている。

■それでもIT投資を止められない理由

価格高騰と長納期化にもかかわらず、多くの組織はIT投資を先送りする余裕がない。その最大の理由は、コロナ禍後に大量導入されたサーバーが3〜6年の保守サイクルの終盤を迎え、更新時期に差し掛かっていることだ。

さらに、タイでも「エンタープライズAI」の導入が加速しており、旧世代のサーバーでは最新のAIワークロードに対応できない。GPU搭載サーバーへの需要が急速に高まっている。同IT幹部は「最新サーバー1台で旧世代の2〜3台分の性能を発揮できるため、コストが上がってもアップグレードする価値がある」と語る。メモリ不足やさらなる値上がりへの懸念から、早めに発注を確保しようとする動きも広がっている。

■最も深刻な影響を受けるタイ政府の公共調達

IT機器の価格変動で最も大きな打撃を受けているのがタイの公共部門だ。政府プロジェクトは固定予算で運営されるため、急激な価格上昇に対応できず、割り当てられた予算ではハードウェアを調達しきれない事態が発生している。その結果、ベンダーが入札に参加できず、プロジェクトの延期や要件の再策定、調達プロセスのやり直しが相次いでいる。

タイの大手IT機器卸売企業であるSiSディストリビューション(タイ)のソムチャイ・シッティチャイシリチャートさんは、政府の公共調達で使われるコンピューターやサーバーの「中央値価格」メカニズムの見直しが必要だと訴える。SiSディストリビューションはシンガポールに本社を置くSiSグループのタイ法人で、タイ国内のIT流通市場で大きなシェアを持つ。

ソムチャイさんは「契約を結んで90日以内に納品する義務を負った落札業者は、その間に部品価格が変動して損失を被っている。ディストリビューター、メーカー、入札業者のすべてが損失を分け合っているのが実情だ」と指摘した。そのうえで、パンデミック時のサプライチェーン混乱と同様のグローバルな問題であることを強調し、政府に対して特定ITプロジェクトの中止許可や納期遅延に対する違約金の免除を検討するよう求めた。

ソムチャイさんは「第2四半期には官民双方でIT調達活動が減少する見通しだ」とも述べており、タイ国内のIT市場は当面厳しい局面が続きそうだ。タイに進出している日系企業にとっても、現地でのIT機器調達コストの上昇や納期の長期化は経営計画に影響を及ぼしかねず、早めの対策が求められる。

出典: Bangkok Post

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