タイ東北部イサーン地方のナコンパノム県で、深刻な燃料不足により地元の著名な寺院が火葬業務を一時停止する事態が起きている。燃料の配給制が敷かれる中、葬儀や救急活動など生活に不可欠なサービスにまで影響が広がり始めた。
■寺院の火葬炉が動かせない
ナコンパノム県の中心的な仏教寺院であるワット・マハタートは、無煙焼却炉を稼働させるための軽油(ディーゼル)が確保できなくなったとして、火葬場の一時閉鎖を発表した。火葬1回あたり約90リットルの燃料が必要で、費用はおよそ3,000バーツ(約1万3,000円)に上る。
しかし地元のガソリンスタンドでは、1回の給油上限が500バーツに制限されているうえ、ドラム缶やポリタンクなど容器への燃料販売も拒否されている状況だ。このため寺院は敷地内の貯蔵タンクを補充できず、葬儀に必要な量の燃料を手に入れることができなくなった。
同寺院の副住職であるプラ・クルー・サム・キッティチャイ・スックワッタノーさんは、「特に身寄りのない遺体や貧困層の方々への影響が深刻だ」と訴える。ワット・マハタートでは通常、月に少なくとも10件の慈善火葬を無償で行っており、こうした弱い立場の人々の最後の儀式が滞ることへの懸念が高まっている。同師は、葬儀目的に限り寺院が容器で燃料を購入できるよう特別措置を講じることを当局に求めた。
タイでは仏教徒が人口の約9割を占め、葬儀は寺院での火葬が一般的だ。火葬は故人を送る最も重要な宗教儀礼とされており、その停止は地域住民にとって極めて深刻な問題となっている。
■救急活動にも深刻な支障
燃料不足の影響はタイ北部にも広がっている。日本人観光者や在住者も多いチェンマイでは、複数のガソリンスタンドが「在庫切れ」の表示を掲げている状態だ。
タイの民間救急・慈善団体として知られるペッカセム財団のサハチャット・リムチャルーンパクディーさんは、500バーツの給油制限が緊急対応活動に深刻な打撃を与えていると明かした。同財団の救急車両は1回の出動で40キロメートルを走行することも珍しくない。現在の給油制限では、救急車1台が1日に対応できるのはわずか2〜3件にとどまり、通常の平均10件から大幅に減少しているという。
同財団は、医療・救急車両に対して給油制限の例外措置を設けるよう関係当局に要請している。
■タイの燃料事情と今後の見通し
タイでは近年、国際的な原油価格の変動や国内の流通事情により、地方部を中心に燃料供給が不安定になるケースが散発的に報じられてきた。今回の配給制がどの程度の期間続くかは不透明だが、寺院での火葬停止や救急サービスの縮小といった事態は、燃料不足が市民生活の根幹を揺るがしかねないことを改めて浮き彫りにしている。タイ在住の日本人や旅行者も、車やバイクの給油計画には余裕を持って対応したい。
出典: Bangkok Post



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